京都在住の私がすすめる「京のまち歩き」

日本古来の修復技術・金継ぎを体験

日本古来の修復技術・金継ぎを体験

※掲載した内容は全て取材時点での情報であり、現在の内容と異なる場合があります。

現地スタッフ おすすめポイント
現地スタッフ

「金継ぎ(きんつぎ)」は、割れた器の破片を漆で接着し、金などの金属粉で装飾して直す日本古来の修復技術。割れやひびなどをあえて見せる仕上げは、器に新しい印象をもたらします。近年、国内に限らず、愛着のある品を永く大切に使いたいと考える諸外国の方からも注目が高まっています。

きんつぎこうぼう つくろいのうつわ きょうとこうぼう

金継ぎ工房「繕いのうつわ」 京都工房

金継ぎの発祥は茶の湯が盛んになった室町時代に遡ると言われます。金継ぎは、壊れた器を修復するための実用的な技法であるとともに、金継ぎで繕ったところを「景色」と呼び、美的に優れたものとする日本特有の美学です。京都と岡山で「繕いのうつわ」工房を営む「生活文化財修復研究所」代表の小石原 剛さんは、"日用の器を直して楽しむ"ことをコンセプトに、多様な生活用品の修復のかたわら金継ぎを身近に感じられるワークショップを主催しています。「金継ぎ体験コース」は旅行者でも短時間でチャレンジできるメニュー。小皿や湯呑みのひびや小さな欠けを金継ぎで補修して当日持ち帰り可能とあって、インバウンド旅行者の体験も増えています。

金継ぎ工房「繕いのうつわ」 京都工房
金継ぎ工房「繕いのうつわ」 京都工房

提供元:繕いのうつわ

【金継ぎ体験コース】 ※予約制
料金

7,000円(陶磁器代を含む・税込)

所要時間

約90分

定員

1名〜8名(10名〜最大20名の場合は出張教室の相談が可能)

備考

※対象年齢の制限なし(中学生未満は保護者と同時参加が必須)
※毎週水曜日・木曜日・金曜日 10:00-17:00より、希望日程を1週間前までに電話またはインターネットから連絡

金継ぎ工房「繕いのうつわ」 京都工房
所在地

京都市上京区相国寺門前町637-5地図

アクセス

地下鉄烏丸線「今出川」駅より徒歩約8分

電話番号

075-744-0898

URL

https://tsukuroi.exblog.jp/

営業日

火曜日〜金曜日 12:00-19:00 ※工房見学・体験は完全予約制

休業日

土曜日・日曜日・月曜日、お盆・年末年始 ※土曜日・日曜日の体験は応相談

受付・体験の流れの説明

体験コースでは、ひびや欠けをあらかじめ下修理した状態の小皿や湯呑みを"研磨し、漆を引いて、金を蒔く"という仕上げ作業を体験できます。陶磁器を持ち込む場合は、破損品の下処理、接着、整形などの下修理から取り組む「繕いのうつわコース」(計3回)が用意されています。

受付・体験の流れの説明

器をセレクト

下修理済の器から、好みのものを1つセレクトします。常時10種程度が揃うこれらの器は古道具店から持ちこまれたもので、江戸〜明治期のものが中心。古伊万里や九谷など産地も図案もさまざまで、選ぶ楽しみがあります。また下処理の際に500度で焼成しているため、時代を感じさせない艶やかさです。

器をセレクト

講師による研磨

はじめに、ひびや欠けの部分を埋めた地の粉を、器の形状にあわせて研磨していきます。この工程は熟練の技が必要なため、講師が担当します。金属製のヤスリや彫刻刀など何度も持ち替えながら慎重な作業が続きます。道具は講師が自作したものも多いそう。

講師による研磨

研磨後の凹凸の埋めを確認

講師による研磨後の器。左側の地の粉で欠けを埋めた部分を指でさわってみると凹凸が無くなり、驚くほど縁のカーブとマッチしていることが分かります。

研磨後の凹凸の埋めを確認

研磨の仕上げ

研磨の仕上げとして、水で濡らしたサンドペーパーをこすらせて磨きます。最後に、余計な油分をアルコールに浸したペーパーで拭き上げ、同時に手指も拭きます。

研磨の仕上げ

漆の色をセレクト

つづいて、金継ぎの下地となる漆の色を「朱・赤・黒」から1つ選びます。金粉の粒子が細かいため、下地に使う漆の色によって仕上げた際の金の色味が変わってくるそうです。また、完成品を使っていく中で金粉が擦れていき、下地の漆の色が出てくるのも味わいの一つです。

漆の色をセレクト

漆の粘度を調整

今回は器の絵付けの雰囲気にマッチする赤色の漆を選びました。体験用の漆は、主成分にうるし科の植物の天然樹脂を使用し、初心者でも扱いやすい新うるしと呼ばれるもの。薄め液を加えて、筆を上下均一に動かすことで全体の粘度が均一になるように整えます。

漆の粘度を調整

漆の塗り方レクチャー

講師が漆の塗り方についてレクチャーします。黒板を使い、器の内側・外側・口部分の順にどのように筆を動かしていくと良いのか、具体的に教わります。

漆の塗り方レクチャー

漆を引く

レクチャーで教わった順序にそって漆を引いていきます。漆は見た目以上に粘度があるので、一筆ずつゆっくりと慎重な作業が続きます。筆は上下へ動かすと滑らかな線が描けるため、引く場所によっては器自体を回転させるのがポイントだそう。

漆を引く

金継ぎレクチャー

塗った漆が半乾きになるまで約10分。この時間を使って金継ぎの歴史や文化的背景についてレクチャーを受けます。室町時代以降、蒔絵など漆を使う工芸技術と、茶道精神の普及によって芸術的な価値が見出されるようになった金継ぎ。戦国武将の茶会で金継ぎの器が出されたら?その意味合いの考察などユニークな講義です。

金継ぎレクチャー

金粉を蒔く

金沢の本金粉を使い、いよいよ金粉を蒔く作業です。はじめに筆の動かし方を教わり、器を手にして素早く金粉を蒔きます。下地の漆が生乾きすぎると金粉が沈んでしまい、乾き過ぎると金粉がのらないそうで、程よい半乾き加減の見極めが大切だそう。

金粉を蒔く

完成

金継ぎした部分が煌めく器が完成しました。扇面と帯紐が描かれた"宝づくし"の器に、新たなアクセントが加わり、さらにおめでたい印象の器に!食器としてだけでなく、苔玉を載せたり、リングピローにしたり、多様な使い方が楽しめそうです。

完成

箱詰め

完成した器は当日持ち帰ることが可能。ただし、金継ぎした部分に何もふれない状態で3日間乾燥させる必要があります。箱の中で宙に浮かした状態を保てるように、講師がオリジナルの箱を作って梱包してくれます。その鮮やかな手捌きに思わず魅入ってしまいます。

箱詰め
体験を終えて
体験を終えて

金継ぎは、壊れた物でも大切にし、傷があることを愛おしむ、侘び寂びの精神の表れである事を学びました。今回の体験を通して、精神性も豊かになったようです。/写真は「生活文化財修復研究所」代表の小石原 剛さんと