京都にある西芳寺は、苔が美しいことから別名「苔寺」とも呼ばれています。約120種以上の苔が境内を覆っており、緑の絨毯を敷き詰めたような景色を楽しめるのが魅力です。苔の見頃は6月〜7月で、最も緑が濃くなります。今回の記事では、京都・西芳寺(苔寺)の予約方法や京都駅からのアクセス方法について解説します。西芳寺(苔寺)の見どころや周辺でおすすめの観光スポットも紹介しているので、京都を訪れる予定がある方は参考にしてください。
京都・西芳寺(苔寺)の基本情報
西芳寺は京都市の洛西エリアに位置する、苔寺を代表する寺院です。8世紀に聖武天皇の命により、行基が法相宗の寺として創建しました。その後、1339年に夢窓疎石が禅寺に再興しました。苔寺は、聖徳太子の別荘跡とされる地に建てられたことでも知られています。庭園は約120種以上の苔に覆われ、澄んだ空気と静寂が漂う独特の雰囲気が参拝者の心を癒します。また、上段は枯山水式庭園、下段は池泉回遊式庭のように、上下段で異なる様式を取り入れている点も魅力のひとつです。1994年には古都京都の文化財として、世界文化遺産に登録されました。苔寺は日本庭園の美しさと禅文化を象徴する場所であり、落ち着いた雰囲気のなかで参拝を楽しむことができます。
所在地:〒615-8286 京都府京都市西京区松尾神ケ谷町56
電話番号:075-391-3631
アクセス:JR京都線「京都駅」よりバス「苔寺・すず虫寺」下車、徒歩約3分
京都・西芳寺(苔寺)の4つの見どころ
京都・西芳寺(苔寺)には、大きく分けて以下4つの見どころがあります。
● 庭園
● 黄金池
● 本堂(西来堂)
● 茶室
西芳寺(苔寺)は苔に覆われている庭園以外にも、見どころが多い寺院です。ゆっくりと参拝しながら、さまざまな景観を楽しみましょう。
庭園
西芳寺(苔寺)の庭園は夢窓疎石によって造られ、日本庭園の傑作として高く評価されています。史跡・特別名勝に指定されており、上下二段に分かれているのが特徴です。上段は枯山水庭園、下段は池泉回遊式庭園になっています。庭園の見どころは、愛称の由来にもなった境内全体を覆う苔です。緑の絨毯のように広がる苔は、光の加減や季節によって、さまざまな表情を見せてくれます。
枯山水庭園 ※通常非公開
西芳寺(苔寺)の枯山水庭園は、日本最古にして最高峰と言われています。枯山水とは、水を用いずに石や砂で山水の風景を表現する日本独自の庭園様式です。西芳寺(苔寺)は日本の枯山水の原点と言われ、他の庭園に大きな影響を与えました。室町幕府の8代将軍である足利義政は、西芳寺(苔寺)の枯山水庭園を模して東山殿庭園を造ったと伝えられています。シンプルな構成や空間の余白が、訪れる人々の心を落ち着かせてくれます。
池泉回遊式庭園
西芳寺(苔寺)の池泉回遊式庭園は、黄金池を中心に広がる空間を歩いて楽しむ構成が魅力です。池泉回遊式とは、池を中心として園路や小島などを配し、庭園内を歩き回れるようにする様式を指します。池の周囲は苔で埋め尽くされており、訪れる人々を緑の世界へと誘ってくれます。また、西芳寺(苔寺)の池泉回遊式庭園は、四季折々の風景と苔の調和も見どころのひとつです。春・夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪のように、季節ごとに異なる顔を見せてくれます。訪れるたびに新たな発見があり、自然を体感できる場所です。
黄金池
黄金池は形が漢字の「心」に見えるのが特徴で、心字池とも呼ばれています。庭園を散策し、「心」の字のまわりを巡ることで、心身を清められると言われている場所です。黄金池には、朝日ヶ島と夕日ヶ島と呼ばれる2つの島が浮かんでおり、後者には「鎮守堂」と呼ばれる小さな神社があります。稲荷明神が祀られていて、龍神を鎮めるのが目的です。龍神は風と雨を司り、怒ると洪水を引き起こす神様です。そのため、夕日ヶ島の鎮守堂は、稲作と収穫の守護神でもあります。
本堂(西来堂)
本堂である「西来堂」は、西芳寺の伽藍の中にある建物です。かつての本堂は応仁の乱によって焼けてしまったため、1969年に京都大学名誉教授村田治郎の設計・監督によって再建されました。西来堂という名前は、「中国に禅宗を伝えた達磨が、西(インド)から来る=祖師西来意」に由来します。彼を称え、西芳寺(苔寺)を再興した夢窓疎石が名付けました。現在は参拝者が写経を行う場所としても知られており、西来堂の前には清水があります。「夕日の清水」と呼ばれ、約1,400年湧き続けているのが特徴です。黄金池の水源のひとつで、西芳寺の閼伽井(あかい)でもあります。閼伽井とは、仏前に供える水(閼伽水)を汲む井戸のことです。閼伽井水は、毎年4月19日に行われる清凉寺の釈迦如来像のお身拭いに使用されています。
茶室
池泉回遊式庭園内には、「湘南亭」「少庵堂」「潭北亭(たんほくてい)」の3つの茶室があります。それぞれ外観が異なるので、見比べてみるとよいでしょう。
湘南亭
湘南亭は、千利休の子である千少庵により建立された茶室です。苔寺の境内で最も古く、国の重要文化財に指定されています。豊臣秀吉に切腹を命じられた千利休や、幕府から逃れるために岩倉具視の隠れ家にもなりました。湘南亭は、黄金池の方に張り出した月見台が大きな特徴です。月とは反対の方向を向いており、これは黄金池に映った姿を観るためと言われています。
少庵堂
少庵堂は、千利休の子・千少庵にちなんで名付けられた茶室です。明治時代から大正時代にかけて活躍した京都の数寄屋師・上坂浅次郎が建築したことでも知られています。現在、少庵堂のなかには千少庵の木像が収められています。
潭北亭(たんほくてい)
潭北亭は、立礼式(椅子式)の茶室です。立礼式は、椅子とテーブルを用いてお茶を点てる方式で、明治時代に海外の人にお茶を振る舞うために考案されたと言われています。潭北亭は夢窓疎石の時代から存在していますが、1928年に再建されています。壁には潭北亭という名前の由来にもなった、禅語録「碧巌録」第18則の公案が記された陶板がはめられています。
京都・西芳寺(苔寺)の予約方法
西芳寺(苔寺)の拝観には、事前予約が必須です。西芳寺(苔寺)の公式サイトもしくは往復はがきにて、申し込みができます。「日々参拝」と「折々参拝」の2つの参拝方法があり、後者は公式サイトからの予約のみとなるため注意してください。
日々参拝
日々参拝は、西芳寺の基本的な参拝スタイルです。まず本堂で参拝・写経を行った後、庭園を拝観できます。写経によって心を静めたうえで、庭園の美しさを深く味わうことが目的です。写経は「延命十句観音経」という初めての方でも取り組みやすい経典の写経を案内しています。
オンラインの場合
オンラインで予約する場合は、公式サイトのアカウントが必要です。そのため、初めて予約する方は、アカウント登録から行いましょう。オンライン決済は、システム手数料が発生します。予約が完了すると、登録したメールアドレスに予約番号が送付されます。入場時に必要になるため、大切に保管しておきましょう。
往復はがきの場合
往復はがきで予約する場合は、以下の事項を記入する必要があります。
1. 参拝ご希望日
※複数日記載することを推奨。時間の希望は不可。原則午前(10時~12時頃)の時間を案内
2. 参拝人数
3. 参拝者情報(郵便番号・住所・氏名・当日連絡のつくメールアドレスまたは電話番号)
※原則当日参拝する人が申し込む。やむを得ない事情で申し込む人が参拝されない場合は、代表者の情報に加え代理申込の情報(郵便番号・住所・氏名・電話番号)も記載が必要
【送付先】
〒615-8286 京都府京都市西京区松尾神ヶ谷町56
西芳寺参拝係 宛
往復はがきの書き方の見本は、こちらから確認できます。予約が完了すると参拝証が返送されるので、忘れずに持って行きましょう。
折々参拝
折々参拝は、西芳寺と禅の教えをより深く知るための参拝です。以下のように、さまざまな参拝方法があります。
● 早起き参拝
● 寺務員とたどる西芳寺の歴史
● 坐禅と日本最古の枯山水(会員限定)
● お庭坐禅(会員限定)
● お子さまの日
西芳寺(苔寺)の枯山水は通常非公開ですが、上記のプランに申し込むと鑑賞することができます。なお、会員とは、西芳寺のサポーターのことです。入会すると、会員限定の参拝枠やWebコンテンツを観る権利を得られます。
※参拝の受付期間や参拝冥加料などの詳細は、公式サイトをご確認ください。
京都・西芳寺(苔寺)周辺のおすすめ観光スポット3選
西芳寺(苔寺)の周辺には、以下の観光スポットもあります。
● 華厳寺(鈴虫寺)
● かぐや姫 竹御殿
● 地蔵院
スケジュールに余裕がある場合は、西芳寺(苔寺)と一緒に他のスポットも観光するのがおすすめです。西芳寺(苔寺)から徒歩圏内にあり、それぞれ異なる魅力を持っています。
華厳寺(鈴虫寺)
華厳寺(鈴虫寺)は、京都・嵐山に位置する人気の寺院です。1723年、学僧・鳳潭(ほうたん)により、華厳宗の復興を目的に創建されました。1868年に臨済宗に改宗された後、独立して運営を行う単立寺院として現在に至ります。一年を通して鈴虫の音色が響くことから「鈴虫寺」として親しまれており、特に人気なのが「鈴虫説法」です。お坊様がユーモアを交えて日常生活の心構えや参拝の仕方、時事ネタなどをわかりやすく語ってくれます。堅苦しさのない和やかな雰囲気も魅力で、禅の「茶礼」に基づき、お茶とお菓子が提供されます。
所在地:〒615-8294 京都府京都市西京区松室地家町31
電話番号:075-381-3830
かぐや姫 竹御殿
かぐや姫竹御殿は京都市西京区松尾に位置する、竹を用いた独創的な建築物です。金閣寺を模して、竹工芸の名人・長野清助が27年もの歳月をかけて独力で築き上げたもので、竹取物語の舞台とも言われる松尾の地に相応しい趣を持ちます。独自技法「清助貼り」など、他に類を見ない工法で造られ、鈴虫寺や西芳寺(苔寺)と並ぶ地域の名所として存在感を放っています。2022年の改装後には「BAMBOO COFFEE」というカフェが併設されました。和の竹空間とブルックリンスタイルの洋の要素が融合した雰囲気のなかで、ゆったりとカフェタイムを楽しめます。
所在地:〒615-8287 京都府京都市西京区松尾万石町51
地蔵院
地蔵院は夢窓疎石を開山とした、臨済宗の寺院です。別名「竹寺」と呼ばれるほど、境内は多くの竹に囲まれており、訪れた人々を魅了します。頭上には竹林と楓、足元には苔が一面に広がり、初夏は新緑、秋は紅葉を楽しめるのが特徴です。特に竹林に囲まれた山門や、書院から望む景色は格別で、自然と歴史の融合を感じられます。また、僧侶の住居である方丈は、京都市登録有形文化財に指定されています。枯山水庭園「十六羅漢の庭」は京都市登録名勝に指定されており、歴史的価値の高い場所です。
所在地:〒615-8285 京都府京都市西京区山田北ノ町23
京都にある苔が美しいお寺6選
京都で苔と言えば西芳寺が有名ですが、以下のお寺もおすすめです。
● 祇王寺
● 嵐山 祐斎亭
● 永観堂(禅林寺)
● 三千院
● 銀閣寺
● 東福寺
いずれのお寺も苔が美しいだけでなく、長い歴史を持っています。比較的アクセスしやすい場所にあるので、京都旅行で時間に余裕がある場合は訪れてみてください。
祇王寺【京都市右京区】
祇王寺は、『平家物語』に登場する白拍子・祇王ゆかりの地として知られています。清盛の寵愛を失った白拍子・祇王が母と妹とともに出家し、余生を過ごした場所です。悲恋の尼寺であり、境内には静けさとともにどこか儚げな美しさが漂っています。また、竹林と青紅葉に囲まれた苔の庭も見どころのひとつです。新緑の季節には、青紅葉と苔が織りなす鮮やかな緑に庭全体が包まれ、訪れる人々を魅了します。
所在地:〒616-8435 京都府京都市右京区嵯峨鳥居本小坂町32
嵐山 祐斎亭【京都市右京区】
嵐山 祐斎亭は、染色家・奥田祐斎氏のアートギャラリーとして公開されている建物です。築約150年の趣がある建物は、かつて料理旅館「千鳥」として使われていました。また、文豪・川端康成が『山の音』を執筆した場所としても知られています。シンメトリーの丸窓が有名ですが、苔に覆われた庭の美しさも見逃せません。周囲には複数の水琴窟が設置されており、静かな音色とともに幻想的な世界へと連れて行ってくれます。
所在地:〒616-8386 京都府京都市右京区嵯峨亀ノ尾町6
永観堂(禅林寺)【京都市左京区】
永観堂は、浄土宗西山禅林寺派の総本山で、秋の紅葉で知られる寺院です。「もみじの永観堂」と呼ばれるほど、約3,000本ものさまざまな紅葉が植えられています。新緑の季節には、青紅葉と苔が織りなす涼やかな風景も楽しめます。境内には放生池を中心とした池泉回遊式庭園が広がり、自由に散策できるのも魅力のひとつ。方丈池のほとりや阿弥陀堂の前など、苔が美しいスポットが点在しているので、歩くたびに異なる表情の庭が楽しめます。
所在地:〒606-8445 京都府京都市左京区永観堂町48
三千院【京都市左京区】
三千院は天台宗の門跡寺院として知られる、皇室ゆかりの格式高い寺です。最澄により比叡山に創建されたのを起源とし、後に現在の大原の地に移されました。国宝である阿弥陀三尊像をはじめとした重要文化財や、聚碧園(しゅうへきえん)などの京都市指定名勝が多く存在します。京都の山里・大原を代表する観光スポットのひとつで、苔の美しさも苔寺に劣りません。なかでも往生極楽院の南側には、一面苔に覆われた美しい庭園が広がり、特に雨上がりには苔がしっとりと艶を帯び、幻想的な風景を見せてくれます。
所在地:〒601-1242 京都府京都市左京区大原来迎院町540
銀閣寺【京都市左京区】
銀閣寺は臨済宗相国寺派の寺院で、正式名称は東山慈照寺です。相国寺の塔頭寺院のひとつで、室町幕府8代将軍・足利義政が山荘「東山殿」として建立したのが始まりとされています。金閣寺に対して「銀閣寺」と呼ばれますが、実際には銀箔は施されていません。質素で渋みのある佇まいは、日本の美意識である「侘び寂び」を体現しています。東山の麓に広がる庭園は、斜面の地形を活かした景観が特徴です。錦鏡池の水辺から斜面まで、苔で覆われています。銀閣寺は拝観者でいっぱいになることも珍しくありませんが、苔が生えているエリアは立ち入り禁止となっており、手つかずの美しさを静かに眺めることができます。
所在地:〒606-8402 京都府京都市左京区銀閣寺町2
東福寺【京都市東山区】
東福寺は臨済宗東福寺派の大本山で、京都を代表する紅葉の名所のひとつです。1236年から19年の歳月をかけて、九篠道家によって創建されました。東大寺と興福寺にちなんで命名された東福寺は、京都五山の第4位にも列せられています。通天橋からの紅葉の眺めが有名ですが、北庭に広がる苔の美しさも見逃せません。苔で描かれた市松模様は、西庭の大市松を受けて徐々に小さくなり、東北の谷へと消えていく構成が特徴的です。青紅葉の時期に訪れると、紅葉シーズンよりも人出が少なく、静かに庭園美を楽しめます。
所在地:〒605-0981 京都府京都市東山区本町15-778
京都の西芳寺(苔寺)で自然と歴史の融合を体験しよう
京都の苔寺の正式名称は西芳寺で、庭園一面が約120種以上の苔に覆われているのが特徴です。6月〜7月頃になると、より緑が鮮やかで幻想的な空間が広がります。庭園が最も有名ですが、黄金池や本堂、茶室など見どころが多くあります。西芳寺(苔寺)の拝観は事前予約が必須です。初夏に京都を訪れると、新たな魅力を発見できるはずです。ぜひチェックしてみてください。
下記サイトでは京都の観光情報を紹介しております。ぜひご参照ください。