播口光
はりぐち ひかる
「すこし、おもしろくします。」という屋号でやってます。自分がやれることを真剣に考えた結果なのですが、これじゃ何屋さんなのか、わからないですね。でもまあいいかと思いながら、ぼんやりやっています。
Instagram:@hariguchihikaru
旅とその装いにまつわるQ&A
Q1. どのような旅が好きですか?
ものぐさなので、実はあまり旅に出ないのです。でも、いざ出かけてしまえば、いつもすごくたのしい。
海でも山でも街でも、国内でも海外でも、なんだってかまいません。いつもとちがう風物・人・食べもの、空気の感じや音やにおい──そんなものにふれられるだけでワクワクします。
あまり予定を立てず、その土地のありように身をまかせて、ぶらぶらと物見遊山するのが理想です。
Q2. あなたにとって旅とはどんなものですか?
旅に出ているときって、自分がどこのだれでもない、なんだか宙ぶらりんな存在になっている気がします。なんとなく地に足がついていない、世界を外側から眺めているような感じ。浮かれているけれど、すこし不安でさみしい。この感覚は旅でしか味わえない気がします。
そんなストレンジャーの目で眺めることで、あらためて世界をヴィヴィッドに感じることができる。旅はそういう機会をもたらしてくれると思います。
Q3. ふと旅に行きたい!と思う瞬間は、どんなときですか?
あまり旅行しないくせに、「ここではないどこか」に行きたい気持ちは、いつもあります。ふだんの生活がどこかままならないんでしょうが、ほんとうは旅先のほうがままならないことは多いはずで、そう思うとちょっと不思議です。
Q4. 今回の装いはどのような旅のイメージですか?
マティスが手がけたロザリオ礼拝堂をいつか観に行きたいと思っていて、そのときのための装いです。あのマティスに会いに行くんだから失礼があってはいけません。リスペクトをこめて、できるだけフランスに関連したアイテムをえらびました。
Q5. 装いのポイントは何ですか?
ロザリオ礼拝堂がいちばんきれいなのは冬の午前11時らしいので、訪れるのはやっぱりその時期がいいですね。きっと寒いだろうけど、明るい陽射しやビーチの印象がつよい南仏には、重たい格好は似合わない気がします。
そこで、厚手のコートの下に、フィッシャーマンズスモックとボーダーシャツを忍ばせました。しょうもないことですが、この黄色と青は礼拝堂のステンドグラスを模しています。
帰りにはニースの海岸にも寄りたいです。そのときはコートを脱いで、マリンルックに早がわり。(実際は寒くて死んじゃうかもですが)
ショッピングバッグにバゲットとか入れて、地元の人を気どって街を歩いてみたいです。
Q6. 旅の装いを選ぶとき、なにを一番意識しますか?
今回そうできているかはわかりませんが、わりとなんでもない格好がいいと思っています。旅人ってやっぱり、よそものじゃないですか。人んちにおじゃましているという感覚があるので、へんに目立たないようにしたいなという気持ちがあります。
旅の供にまつわるQ&A
Q7. 旅に必ず持っていくものはなんですか?
ひとつはバードコール。手にして20年くらいになります。もうひとつはアイマスクで、テンピュールのもの。ロケバスでの移動が多いスタイリストさんがすすめてくれました。Q8. 持っていく理由や、旅先での使い方を教えてください?
バードコールは、旅先で手持ち無沙汰なときにピチュピチュ鳴らして、鳥たちとコール&レスポンスをしたります。(あんがい反応してくれます)旅って、なんにもしない時間が多いというか、全体がなんにもしない時間という気もするのですが、これで遊んでいると、「いまオレ、なんにもしてないなぁ」と実感できて、より旅の気分に浸れます。
アイマスクは、乗り物でも宿でも重宝します。眠りたいときにまわりが明るいことが、旅先ではわりと多いので。
どんなものでもいいと思うんですが、テンピュールのは、立体的にできていてしっかり遮光してくれるのと、肌ざわりがいいのが気に入っています。
播口光さんの旅の1枚
国立新美術館のマティス展で再現された、ロザリオ礼拝堂。ほんとに訪れるまでは、これで想像をふくらませます。
(写真提供:播口光)
(写真提供:播口光)
Text:Hikaru Hariguchi
Photo:Yuji Kanno
Supervision:Setsuko Todoroki