やきものの産地で愛される“濃い”うどん
やきもの全般を指す「せともの」。その由来となった街が愛知県瀬戸市です。この街は、やきものの一大産地であったという歴史から、食文化もその歴史に影響され、職人たちがパパッと食べられるうどん屋は、そこら中にあったといいます。
そのなかでも、地元のみなさんが愛してやまないお店〈賀登光 本店〉に伺いました。
レトロな引き戸を開けると、厨房が見える小さなカウンター、テーブル席や小上がりの席にはお客さんがいっぱいいて、いいお店に来たなあ、と感じます。大将は、四代目・佐野敬徳さん。お店の歴史を尋ねてみると、「ひいばあちゃんが名古屋城のお堀にあった『賀登喜(かどき)』という料亭さんの娘だったの。そこに瀬戸出身の光三郎さんが奉公へ行って、娘さんと結婚して、お店を開いたの」とのこと。
料亭と先代の名前を合わせて「賀登光」。それからずっとこの場所で営業を続けているといいます。
戦後は「瀬戸へ行かんでどこへいく」と言われるほど、やきものの仕事があふれて景気がよく、お店から1キロ圏内に覚えているだけでも、7軒ものうどん屋がひしめきあっていたといいます。
「自分で練って、自分でこねて、自分で切る。それが手打ち」
大将の佐野敬徳さんが、四代目を継いだのは、47歳のとき。
もともとは「絶対、後は継がない!」と決めていたものの、外壁屋、東京・神楽坂のレストランで働いていた後、「うどんを打ちたい」と弟子入りしました。
「でも、親父がみてくれたのは3日だけ。子どもの頃から見とったで、できるやろ、やってみろと。そこから1年ぐらいは自分が作っては、直してを繰り返して。
その後、親父は亡くなってしまったんですけれど、お袋が僕がうどんを切る音を聞いて、一人前になったな、と。包丁が擦れる音、親父と一緒のリズムで、とん、とん、とん、とん、と音がする。それで大丈夫だろうと思ったみたい」
「こだわりは、手打ちであること。今は手打ちのうどん屋といっても、途中途中で機械を使うところがたくさんあるんだけど、親父はそれを好まなくて。自分で練って、自分でこねて、自分で切る。手作業で全部やる。それが、うちの手打ち。
手打ちが出来んくなったら、やらない。
親父がずっと言っていた言葉が残っているから、それだけがこだわり」
時代の流れとともに味も変化したものの、ほかのうどん屋に比べれば、味つけは濃いめ。とりわけ、お父さんの時よりも出汁を濃くしているそうで、素材の旨みが“濃い”うどんになっています。
自然薯で麺が見えない!名物の「芋うどん」
お店の看板メニューは、創業当初から提供しているという「芋うどん」。瀬戸では冬の風物詩のような存在で、〈賀登光 本店〉の芋うどんは地元でとりわけ人気が高いです。うどんが見えなくなるほど、自然薯をたっぷりかけたうどんで、この自然薯がとっても濃厚!
昔は、やきものの土や釉薬の原料を採るため、山へ入ったときに見つけてくれる方がたくさんいたようですが、今はそうした人も減り、採ってくれる方も高齢になってきているといいます。食べられるときに、ぜひ食べてくださいね。
一度食べると、ふつうの味噌煮込みに戻れないかも?!
副菜に野菜の天ぷら、おでん2本、冷奴、イワシフライ、刺身のどれかを選べたり、お米も白米か瀬戸で“ごも飯”と呼ばれる五目飯がついてきます。お話をお聞きすると、うどんを頼まずにはいられないのですが、実は、中華そばやきしめんがあったり、かつ丼や親子丼などの丼もの、からあげ定食、お酒に合うつまみなど、メニューがたくさんあります。
どれを食べても、本当においしく、日常的に行きたくなるお店です。ひとりでカウンターに座って食べるもよし、数名で食べに行くのもよし。瀬戸の歴史を感じながら過ごすことのできるとてもすてきなお店でした。
Text:Miku Minami
Photo:tabigatari editorial department
いつもと違う愛知県観光には、瀬戸市の〈賀登光 本店〉がおすすめ。
賀登光 本店
| 所在地 | 愛知県瀬戸市刎田町5(Google Map) |
| アクセス | 名鉄尾張瀬戸駅から徒歩約10分 |
| 電話番号 | 0561-82-2539 |
| @kadomitsu_seto | |
| 営業時間 | 11:00〜20:00(L.O 20:00) |
| 休業日 | 水曜 |
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