料理に奥行きをプラスする発酵調味料に惹かれて
静岡県の中央部に位置する藤枝市は、美しい里山が残る、自然にあふれた地域。農業も盛んで、特に山間部の朝比奈エリアは玉露の日本三大産地ともいわれているのだとか。今回はそんな朝比奈エリアで、地域の食材と自家製の発酵調味料を使い、料理やお菓子を提供する〈檸檬とラクダ〉を訪れる。
お店は朝比奈川のすぐ側、〈ファミリー民宿 朝比奈〉の敷地内にある。
「発酵調味料に興味を持ったのは、世界一周の旅に出ていた2015年頃。友人が甘酒を使った野菜の炒め物を作ってくれて、そのおいしさに感動したんです。甘酒を入れるだけでこんなに味わい深くなるのだと驚きました。しばらく海外にいて、日本食から遠ざかっていたのも、よりおいしさを感じられた理由かもしれません。これまでメイン料理といえば、魚やお肉といったイメージでしたが、野菜が主役でもいいんだと、良い意味で固定概念が覆されました」
〈檸檬とラクダ〉主宰の兼子有希さん。
自家製の米麹。兼子さんは米麹のふわふわとした、かわいい見た目が堪らなく好きなのだとか。
カウンター後ろには高窓が設計され、移り変わる朝比奈の景色を楽しめる。
今回はそんな〈檸檬とラクダ〉の料理を教わることができる、料理教室に参加してみる。
お肉を使っていないのにうま味たっぷりのコンソメ麹
〈檸檬とラクダ〉の料理教室は、味噌や柚子胡椒をはじめとした調味料作りが体験できるレッスンや、旬のお野菜と発酵調味料を使った料理を教わるレッスンなど、季節ごとに内容が変わる。今回教わるテーマは「コンソメ麹」。コンソメ麹の作り方から使い方まで、たっぷり教えていただく。
料理教室はデモンストレーション形式で行われる。
まずはコンソメ麹の作り方から。コンソメ麹とは野菜と米麹、塩だけで作られる発酵調味料のこと。作り方は意外と簡単で、玉ねぎとセロリ、にんじんをミキサーにかけたら、米麹・塩と混ぜ合わせて発酵させるだけ。消毒した清潔な容器に入れ、1日1回かき混ぜておくと、夏なら1週間ほどでコンソメ麹が完成する(気温の低い冬の場合は、10日〜2週間ほど)。野菜から出る水分を利用して発酵させるため、ご自宅で再現する場合は乾燥タイプではなく、生の米麹を使うのがポイントだ。
混ぜたばかりのコンソメ麹は鮮やかな色合いだが、発酵する過程で落ち着いた色味へ変化するとのこと。完成したコンソメ麹を味見させてもらうと、市販の洋風だしのようなうま味が凝縮された味わいでとてもおいしい。お肉を一切使っていないのに、ここまで奥深い味わいになるとは驚きだ。
発酵させ、完成したコンソメ麹。くすんだ色に変化するのは自然の反応。
料理上手になれるポイント満載のレッスン
グラタンに使うベシャメルソースの材料。
〈檸檬とラクダ〉で使用する野菜は、近くのファーマーズマーケットや提携している地元の農家さんなどから仕入れ、その時期においしいものを揃える。兼子さんがお店近くの畑で育てている野菜を使うこともあるそう。
難しそうなレシピに思えたが、兼子さんがポイントを説明しながら進めてくれるので、とてもわかりやすい。“玉ねぎは繊維を断裁する向きでカットすると甘みがよく出る”、“マッシュルームを丸ごと蒸し焼きにするとうま味が凝縮される”など、料理をおいしく仕上げるためのコツも満載。簡単に実践できるポイントばかりで、明日から料理上手になれそうな気がしてくる。
今回のレシピの中で、特に興味深かったのは、Veganチーズのレシピだ。味噌でコク、お酢でチーズの酸味を表現し、さらに白玉粉を使って“もっちり、とろり”とした食感を生み出していく。すべての材料をミキサーで攪拌したら、“チーズのようなもったり感が出るまで火にかけるだけ”という簡単さにも感動した。
味見させていただくと、チーズそのものの味でまた驚き!
サラダにかけるドレッシングづくりや、ちょっとした野菜のカットなどを特別に手伝わせていただきながら、2時間ほどですべての料理が完成した。
基本はデモンストレーション形式だが、少人数の場合はちょっとした作業も体験させてもらえる。
野菜メインの料理と思えないほど食べ応え抜群
できあがった3品を器に盛り付けていただき、できたての食事を参加者みんなで味わう。
兼子さんお気に入りの作家さんの器によそって。〈檸檬とラクダ〉では器の展示会なども行っている(不定期開催)。
「お肉や乳製品などの動物性食品を使わないと、コクが足りず、どうしてもさっぱりとした単調な味わいになってしまいがちです。それを補ってくれるのが発酵調味料です。野菜と麹の甘みや、発酵することで引き出されるうま味によって、料理の味わいが複雑になり、深みが生まれます。ヴィーガンではない人も野菜メインの料理のおいしさに気付いたら、レパートリーが広がってもっと日々の食事が楽しめるんじゃないかと思っています」
塩麹のヴィネグレットソースをかけた、春菊のサラダ。
一番人気の「ショートブレッド」は、バターや小麦粉を使っていないのに、さっくりとした食感で、やみつきになること間違いなし。朝比奈で採れる「おくみどり」という品種の抹茶を使ったクッキーや、無農薬ラベンダーを練りこんだ変わり種のクッキーも。カレー作りからスタートした〈檸檬とラクダ〉らしく、スパイスやハーブを使ったお菓子も豊富だ。発酵調味料の魅力やおいしさを再発見することができる〈檸檬とラクダ〉。今回訪れてみて、自分の食生活を見直すきっかけにもなったように思う。醤油や味噌、みりんなど日本人にとって発酵調味料は古くから身近な存在。改めて日本の食の素晴らしさにも気付けた。
JR東海のオンラインショップ「いいもの探訪」では、限定の焼き菓子セットも販売中。興味のある方は、ぜひチェックしてみては?
Text:Ayumi Otaki
Photo:Misa Nakagaki
いつもと違う静岡県観光には、藤枝市の〈檸檬とラクダ〉がおすすめ。
檸檬とラクダ
| 所在地 | 静岡県藤枝市岡部町宮島388-1 |
| アクセス | JR「静岡駅」から車で約40分 |
| URL | https://www.lemonandcamel.com/ |
| @lemonandcamel | |
| 営業時間 | 11:00〜16:00 |
| 休業日 | 日曜、月曜 ※料理教室やランチの営業日程はホームページよりご確認ください |
※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。