伊豆半島の付け根にある静岡県三島市。富士山からの湧水が街中に流れ、“水の都”ともいわれる三島は、癒しの観光スポットとして人気を集めている。そんな三島で今注目されているのが、三島駅・三島広小路駅・三嶋大社を結ぶ三角形のエリア「三島のさんかく」だ。この三角形の中に、近年新しいスポットが続々誕生しているという。

歴史と自然を感じられる散策エリア

東京から新幹線で約50分、三島駅に降り立った。JR三島駅の南側は、楽寿園や白滝公園をはじめ、三島駅前通り名店街、三嶋大社などのスポットがあり、自然・文化・歴史がぎゅっとまとまっている。
三島はさすが水の都というだけあって、いくつもの湧水に出会うことができる。白滝公園から川のせせらぎを感じながら散策していると、その途中にタビガタリでも取材した独立書店〈ジンジャーブックスカフェ〉が見えた。

散策していて思うのはカフェや飲食店など、小規模ながらも素敵なお店が多いなぁということ。個人経営のお店が多く、それぞれ個性的な雰囲気。ここにしかないお店は、つい立ち寄りたくなってしまうような魅力にあふれている。

街づくりの出発地点となった三嶋大社・門前通りの複合商業施設

さらに先へ進むと、三島を代表する観光名所〈三嶋大社〉に到着した。三島はかつて、源頼朝にゆかりのある三嶋大社の門前町として栄えた歴史がある。古くから信仰を集め、市民に寄り添ってきた〈三嶋大社〉は街の拠り所的存在だ。
そんな〈三嶋大社〉の門前通りに、「三島のさんかく」エリアの街づくりのきっかけとなるような施設があったという。

〈大社の杜(たいしゃのもり)みしま〉は「アソビの生まれる粋な裏路地」をコンセプトに、2013年から2019年の間に運営されていた複合商業施設。プロジェクトを先導したのは、地元の建設会社・加和太建設 代表取締役の河田亮一さんだ。
加和太建設 代表取締役の河田亮一さん。
加和太建設 代表取締役の河田亮一さん。
飲食店や雑貨屋など、10店舗以上が集結した〈大社の杜みしま〉。2日に1回の頻度でイベントも行われ、6年間で延べ250万人以上が訪れた。加和太建設は施設を立ち上げるだけでなく、テナントの誘致からイベントの企画まで実施していたという。「〈大社の杜みしま〉を起点に、街を知ってもらえるような場所にしたいと考えました。すると、街のために何かをやりたいと手を挙げてくださる方がたくさん現れたんです。場所を持つことの影響力の高さも感じましたね」
 
この経験を活かし、次に注目したのが「三島のさんかく」エリア。街が変容するほどの成果を生み出すには、「点ではなく面で取り組むことが必要」と感じたからである。「私の考える“素敵な街”は古いものを上手にリノベーションしていたり、さまざまなお店や施設がぎゅっと集まっていたりする街。そこで、「三島のさんかく」エリアにあった空き物件を、リノベーションを施したうえで貸し出すことにしました。三島で何かを始めたい人のハードルを下げつつ、素敵と思っていただけるスポットを増やしていきたいと考えたんです」

こうして、これまで培ってきたノウハウを活かした、加和太建設の新しい街づくりプロジェクトがスタートする。そして、三島の街づくりの拠点として象徴的な場所である〈みしま未来研究所〉が誕生した。

 

あらゆる人たちの交流拠点となる〈みしま未来研究所〉


〈三嶋大社〉から鎌倉古道を歩いて5分ほど、〈みしま未来研究所〉に立ち寄った。

「地域の未来をつくる人をつくる」をコンセプトに、2019年1月にオープンした〈みしま未来研究所〉は、コワーキングスペースやレンタルスペース、カフェといった複数の機能をもつ地域の交流施設で、地元の人や移住者、旅人などさまざまな方が訪れる。
もともと取り壊される予定だった幼稚園をリノベーションした〈みしま未来研究所〉。
もともと取り壊される予定だった幼稚園をリノベーションした〈みしま未来研究所〉。
ここでは出会った人同士で会話を楽しんだり、街のおすすめスポットの情報を交換したりなど、活発なコミュニケーションが生まれているそう。次第に、「自分のお店をもちたい」「活動するための場所が欲しい」などの声が運営メンバーのもとに届くように。

そこで河田さんは、加和太建設に新しく「まちなか事業室」を立ち上げ、街づくりのハブとして、チャレンジする人をサポートする活動をスタート。〈みしま未来研究所〉で出会った人同士の活動がどんどん街へと広がり、変化をもたらしている。
源頼朝の時代に、鎌倉街道のひとつとして整備された鎌倉古道。
源頼朝の時代に、鎌倉街道のひとつとして整備された鎌倉古道。
鎌倉古道をさらに進み、三島広小路駅方面へ向かう。途中、県外の設計事務所が関わる〈CoDoU みしま〉や移住者の方が立ち上げた〈ゲストハウスgiwa〉などのコミュニティスペースが点在している。この辺りは小規模の飲食店も多数あり、特に散策の楽しいエリアだ。昼呑みのできる〈どてやま〉や、素揚げにこだわったから揚げの名店〈から揚げ 若鳥〉などのお店も。さらに〈三嶋大社〉から三島広小路駅までの大通りには商店街があり、三島で長年愛されるうなぎの名店をはじめ、雰囲気のよい老舗もちらほら。

昔ながらの空気感が漂う街並みに、新しいスポットが融合して、新しい三島の魅力が生まれつつあるようだ。

 

街の人々の力で再生・復活した源兵衛川


三島広小路駅から北上し、出発地点の三島駅を目指す。レトロな雰囲気がたまらない老舗喫茶〈ティーサロン ボナール〉を通り過ぎ、源兵衛川へ。

源兵衛川は水の都・三島を象徴する清流のひとつ。川沿いには、石畳の歩道が整備されていて、せせらぎを感じながら散歩が楽しめる。
驚くほど澄み切った今の源兵衛川からは考えられないが、かつて高度経済成長期を境に水が枯れ、さらに生活排水の流入などによってひどく汚れた状態になっていたという。じつは埋め立ても検討されていたのだとか。そこで、行政・NPO・企業・市民が協力し、川の再生事業がスタート。今ではゲンジボタルやカワセミなどの動物たちが戻り、子どもたちが川遊びできるほどの清流へと再生した。散歩道には、ひと休みできるベンチも。ゆっくり源兵衛川を眺めていると、「三島の魅力を途絶えさせてはいけない」と団結した街の人々に感謝したい気持ちが生まれてくる。

 

さまざまな変化が街の価値を高め、街が立ち上がっていく。


加和太建設の河田さんは、“このエリアで起きてほしい変化”をイメージしながら布石を打つことで、点ではなく面での変化を促しているのだろう。その結果、人や情報が集まり、新しい活動が生まれ、街の価値がどんどん高まっているように感じる。街が立ち上がっていく過程や結果を楽しんでいる河田さんは、本当の意味でのクリエイターだと感じた。

街の玄関口である「三島駅」、市民の心の拠り所である「大社」、人々の営みや暮らしがみえる「三島広小路」。三島の魅力がぎゅっと詰まった「三島のさんかく」は、街をもっと素敵にしようと思う人々の手で、今後ますますおもしろいエリアになっていくに違いない。
 


Text:Ayumi Otaki
Photo:Akihiro Morita



いつもと違う静岡県観光には、三島市の〈三島のさんかく〉がおすすめ。


 
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