富士山南麓、伊豆半島の付け根に位置する三島市。三島は富士山からの湧き水が流れる美しい街で、「水の郷百選」にも選ばれている。そんな“湧水のまち”三島の観光に訪れたら、ぜひ旅程に組み込んでいただきたいのが朝散歩の時間。朝の新鮮な空気を感じながら、清流スポットを巡れば、旅をより素敵にスタートできるはず。三島の朝ならではの風景に出会ってみよう。

 06:45〈白滝公園〉
湧水のまち・三島らしい公園をスタート地点に


伏流水が湧き出る公園や小川、水路など、清流スポットにあふれている三島駅南側。今回は、宿泊したホテルからほど近い場所にある〈白滝公園〉をスタート地点に、三島の街を巡ってみることにした。
三島駅から徒歩5分ほどの位置にある〈白滝公園〉は富士山からの伏流水がこんこんと湧き出る、“湧水のまち”三島を象徴するような公園。溶岩の隙間から流れ出る地下水が、白い滝のように見えたことから「白滝公園」と名づけられたのだとか。

園内にはちょっとした遊具やゆっくり座れるベンチなどがあり、市民の憩いの場所になっている。この日は、朝早い時間にもかかわらず、愛犬を連れて散歩をする市民の姿が見えた。〈白滝公園〉に湧き出る地下水は、市内を流れる桜川の源流となっている。心地よい木陰の下、小さな橋などを渡りながら水の流れを追ってみた。透き通った水の流れや、水面に映り込む木々が美しく、幻想的な風景が広がっている。
公園内にはかわいらしい鴨も。
公園内にはかわいらしい鴨も。
日中に比べると、車通りの少ない早朝の時間帯はより静けさが増しているように感じられる。新鮮な空気を吸いながら、川のせせらぎ音に包まれる心地よい空間を過ごしたら、徐々に体が目覚めてきた。

 

 07:00〈源兵衛川〉
三島を代表する清流の流れに沿って

市内には三島の清流を楽しむ散歩ルート「街中せせらぎ順路」の看板があちこちにある。その順路に従って、次は〈源兵衛川〉に向かってみることにした。〈白滝公園〉を出て、道沿いに歩いていくと、まもなく〈源兵衛川〉が見えてきた。
 
〈源兵衛川〉は、市立公園・楽寿園に湧き出る地下水を源流とする農業用水路で、終着地である中郷温水池まで1.5kmの長さで続いている。古くから三島市民の生活を潤してきた欠かせない存在だ。川には木や石の足場が点々と続いていて、清流を身近に感じながら散歩が楽しめる。
川沿いではなく、川の中を歩くというのはなんとも不思議な体験。〈源兵衛川〉は驚くほど澄み切っていて、水面に朝日が当たってきらきらと輝いている。自然の美しさをダイレクトに感じられる、贅沢な散歩道だ。一歩一歩、飛び石を渡って歩くと、なんだか童心に帰ったようなワクワク感があって楽しい。地元の人だろうか、向こうから歩いてくる人が見えた。すれ違う際はところどころに設置してある横の飛び石に移って、道の譲り合いを。すれ違いざまに挨拶をし合うのも、三島の街に溶け込んでいるような気がしてなんだか気分が良い。
 
少し歩くと休憩できるスペースがあった。少し腰を下ろして深呼吸。ここなら水に足をつけて涼む、なんて楽しみ方もできそうだ。
歩みを進めると、川の散策路が途切れたので一旦地上へ。「街中せせらぎ順路」の看板がところどころに設置されているので、迷うことはない。鎌倉古道を横切り、三島のうなぎの名店付近でまた〈源兵衛川〉に合流する。
ここには、駿豆五色橋のひとつに数えられた源兵白旗橋がかかっている。その先には、江戸時代に時間を告げる役割を担った〈時の鐘〉があった。かつて三島八景のひとつに数えられた〈時の鐘〉は、三島散策ではぜひ立ち寄っておきたいスポットだ。
三石神社の境内にある〈時の鐘〉は有形文化財に指定されている。
三石神社の境内にある〈時の鐘〉は有形文化財に指定されている。

 07:15〈水辺の散歩道〉
自然に包まれる贅沢な時間


道に沿って歩いていくと、伊豆箱根鉄道(通称、いずっぱこ)の線路が見えてきた。ちょうど電車が通り、その姿を間近で見ることができた。少し先には、川から電車を眺められる絶好のビュースポットもあるので、迫力満点の風景を見たい方はぜひ立ち寄ってみて。
昔の復刻デザインの電車。レトロなカラーがかっこいい。
昔の復刻デザインの電車。レトロなカラーがかっこいい。
踏み切りを渡り、また川の近くへ。ここは〈水辺の散歩道〉。その流れは街の南側へ続いている。トンネルのような橋をくぐり抜け、さらに先へ進んでみた。
〈水辺の散歩道〉に入ると、自然に没入できるような静かな空間が広がっていた。近くには、以前取材した〈#dilettante cafe〉もある。
 
透き通った川の流れと青々と生い茂った木々のコントラストが美しく、心が癒される。まさに、どこを切り取っても絵になるような風景だ。朝が早いからか人通りがほとんどなく、せせらぎの音に包まれながら、この景色を十分に満喫できた。

〈源兵衛川〉の流れはまだまだ先へ続いている。道順に沿って進み続けた先にあったのは、〈水の苑緑地(みずのそのりょくち)〉。
ここではさらなる静寂空間が広がっていた。時が止まったような美しさで、思わず息をのむ。湧き水の中には魚が泳いでいて、どこからか鳥の鳴き声も聞こえてきた。看板を見ると、カワセミやセグロセキレイ、オニヤンマなどが生息しているのだとか。生き物がのびのびと暮らせる、豊かな自然環境が守られている証拠だ。
 
〈源兵衛川〉の自然を満喫したあとは、静かな住宅街を通って〈三嶋大社〉へ向かってみる。朝方の静かな街は、ひと味違った趣が感じられて良い。しばらく歩くと、街中に小川を発見した。三島は本当に水が豊かな街だと実感する。
三島の街を流れる御殿川。
三島の街を流れる御殿川。
しばらく歩くと三島大通り商店街に出た。三島大通り商店街は、三島広小路駅から〈三嶋大社〉までを結ぶ、旧東海道にある商店街。その長さは700mにも及ぶ。この時間帯は人通りが少なく、昼間とはまた違った落ち着いた雰囲気だ。

 07:35〈三嶋大社〉
凛とした空気の中、朝のお参りを


〈三嶋大社〉に到着した。〈三嶋大社〉は奈良・平安時代の古書にも記録が残っているほど、古くからこの地を守り続けてきた由緒正しき神社。源頼朝が源氏再興を祈願した神社としても知られている。
大鳥居をくぐって、境内へ入ると両脇に大きな池があった。「神池(しんち)」と呼ばれる池には、富士山や箱根山からの湧き水が流れ込んでいるのだそう。覗いてみると亀や立派な鯉がたくさん泳いでいた。
〈三嶋大社〉の総門。
〈三嶋大社〉の総門。
〈三嶋大社〉の総門を抜け、さらにその先へ。参拝者がまばらな早朝の〈三嶋大社〉は、落ち着いて参拝できる絶好の時間帯。神職の方が掃き掃除をする音や鳥のさえずり、自分の足音だけが聞こえて、背筋が自然と伸びるような気持ちになった。手水舎で手と口を清め、神門をくぐると三島市指定文化財の舞殿(ぶでん)が見えた。その先にあるのは、国の重要文化財に指定されている本殿・幣殿・拝殿だ。ゆっくりと境内を散歩できるのもこの時間帯ならでは。
 
一歩ずつ進むたび、心が整っていくような不思議な感覚。凛とした空気の中、自分と向き合う素晴らしい時間が過ごせた。

 07:55〈水辺の文学碑〉
文学者たちの作品で三島の魅力を再発見


〈三嶋大社〉の参拝を終えた後は、スタート地点の〈白滝公園〉へ戻ってみよう。桜川沿いには、〈水辺の文学碑〉と名づけられたスポットがある。太宰治や正岡子規など、三島にゆかりのある12人の句碑が並んでいた。
これまで、さまざまな文芸作品の舞台となってきた三島。実際に三島の街を歩いてみて、多くの文学者たちがその魅力に心惹かれた意味がわかったような気がした。

こちらもおすすめ!三島の朝散歩スポット

 中郷温水池公園 

体力に自信のある方は、〈源兵衛川〉の終着点である〈中郷温水池公園〉まで足を運んでみよう。

公園の大部分を占めるのは中郷温水池。1953年に、冷たい湧き水を稲作用に温めるために整備されたため池で、農林水産省のため池百選にも選ばれている。1996年から1998年にかけて中郷温水池の周りに散策路が作られ、〈中郷温水池公園〉が完成。水辺の自然を存分に楽しめる三島らしいスポットになっている。
多種多様な生き物が生息するビオトープとして環境が整備され、豊かな自然が広がっている〈中郷温水池公園〉。市街地の中にある公園とは思えないほど、珍しい水鳥やアメンボ、魚など、さまざまな生き物を観察できる。

南側には富士山がよく見える絶景スポットも。運が良ければ中郷温水池に映る逆さ富士を拝むことができるので、天気が良く、風のない日を狙って訪れてみて。
生き物を間近で観察できる貴重な公園。
生き物を間近で観察できる貴重な公園。



 和カフェ兎月園 

旧東海道沿いに、創業90年の歴史をもつ老舗和菓子店・兎月園が運営する〈和カフェ兎月園〉がある。3代目店主の綾部剛さんが“ここでしか味わえない体験を提供したい”と、2021年にオープンしたカフェで、和風アフタヌーンティー(要予約)や朝粥のモーニングセットなど、和をテーマにしたメニューが揃っている。

朝散歩のスポットとして立ち寄るなら、7時から営業をスタートする土日祝がおすすめ。モーニングセットは、お粥とあんバタートーストの2種類から選べる。
兎月園自慢のお粥は、お出汁がしっかりと感じられる食べ応えのある味わい。駿河湾でとれるカツオをベースにイワシと昆布をあわせて取ったお出汁を使用しているのだとか。滋味深い味わいが体の隅々までじんわりと染み渡り、体を目覚めさせてくれる。
「モーニング お出汁の利いたお粥セット」960円。※ゆで卵は先着10個限定
「モーニング お出汁の利いたお粥セット」960円。※ゆで卵は先着10個限定
プラス50円で選べるみかんジュースは、沼津市西浦のみかん農家から直接仕入れたもの。無添加・無加糖にこだわり、ジューシーなみかんのおいしさをダイレクトに味わうことができる。兎月園で人気の和菓子「栗饅頭」もセットに。
静かな早朝の時間帯にじっくりと“湧水のまち”三島を楽しむことができる朝散歩。美しい風景を独り占めしているような贅沢さに浸れるスポットもあり、昼間とは違う三島の魅力を存分に感じることができた。朝散歩からスタートする三島観光。今日もきっと良い日になるに違いない。

 

Text:Ayumi Otaki
Photo:Misa Nakagaki


 



いつもと違う静岡県観光には、〈三島の朝さんぽ〉がおすすめ。

白滝公園


所在地静岡県三島市一番町1-1
アクセスJR「三島駅」から徒歩約5分

源兵衛川


所在地三島市芝本町ほか
アクセスJR「三島駅」から徒歩約5分
URLhttps://www.city.mishima.shizuoka.jp/page/30980.html

時の鐘


所在地静岡県三島市広小路町13-1
アクセスJR「三島駅」から徒歩約15分
伊豆箱根鉄道「三島広小路駅」から徒歩約3分

水辺の散歩道


所在地静岡県三島市広小路町12-15
アクセスJR「三島駅」から徒歩約17分
伊豆箱根鉄道「三島広小路駅」から徒歩約4分

水の苑緑地


所在地静岡県三島市南本町9
アクセス伊豆箱根鉄道「三島広小路駅」から徒歩約8分

三嶋大社


所在地静岡県三島市大宮町2-1-5
アクセスJR「三島駅」から徒歩約15分
伊豆箱根鉄道「三島田町駅」から徒歩約7分
URLhttps://www.mishimataisha.or.jp/

水辺の文学碑


所在地静岡県三島市大宮町
アクセスJR「三島駅」から徒歩約10分

中郷温水池公園


所在地静岡県三島市富田町5-30
アクセスJR「三島駅」からバスに乗車して「郵便局」下車、徒歩約5分
URLhttps://www.city.mishima.shizuoka.jp/page/1544.html

和カフェ兎月園


所在地静岡県三島市本町2-1
アクセスJR「三島駅」から徒歩約10分
電話番号055-972-2376
URLhttps://www.togetsuen.co.jp/cafe/
Instagram@togetsuen_mishima_wacafe
営業時間平日 9:00~18:00
土日祝 7:00~18:00
休業日木曜

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