今年の夏は、海へ行くことにした。
海へ行こうなんて、考えたのはいつぶりだろう。私は習性が圧倒的にインドアだ。本を読んで、Netflixでアメリカのドキュメンタリーを観て、作文をして生きている。みんな、家のなかでできてしまう。旅にもあまり出ない。
なんでまた海へというと、おととし温泉に入りに山に行った(これくらいの旅も私にはめずらしい)、その帰りに寄った海辺に思いがけずピンときたからだった。
白い砂浜と真っ青な水面にぎらぎらした紫外線を受けたこの海は、どうもただ陽気なだけではない。いつも家の中にいる私にも、つけいる隙があるように見えた。それはこの海岸の街が、古く湯治で栄えた町だからかもしれない。
近くのコンビニでアイスコーヒーを買って、波打ち際を遠くに眺め、同行の家族とただ「海だ」「海だね」「海だな」とたしかめ合う。目の前の海がただ単に海である、それがそのまま痛快だった。
昨年は家族が全員多忙な年でせわしなくすぎ、一転、今年はずいぶん静かだ。ああそうだ、海に行こう、あの海をまた、家族を誘って一緒に見に行こうと思った。
ダンスミュージックが好きだ。90年代のおわりにビッグビートの四つ打ちで目を覚まし、00年代のきらきらしたハウスに奮いたって、10年代はじめのEDMの爆発するドロップを糧にがむしゃらに突っ走った。おかげで私は40代までたどりつくことができて、そのあとそういえば最近しばらく聴いていない。
今年の夏は海へ行く。ただ陽気なだけではなさそうなあの海へ、日頃は陽を受けない生白い私が、家族とそれから、あの頃のダンスミュージックを連れて行く。
吹き出した。そんなの、泣いてしまうかもしれない。
| 1. Star Guitar | Chemical Brothers |
| 2. D.A.N.C.E. | Justice |
| 3. Red Alert | Basement Jaxx |
| 4. Call On Me | Eric Prydz |
| 5. Levels | Avicii |
| 6. Save The World | Swedish House Mafia |
| 7. Clarity | ZEDD |
| 8. Praise You | Fatboy Slim |
| 9. Get Lucky | Daft Punk |
| 10. Two Months Off | Underworld |
Text:Chikako Koga
Cover art:Yoshiyuki Okada
古賀及子(こがちかこ)
1979年生まれ。エッセイスト。著書に『忘れたこと、忘れないままのこと』(シカク出版)、『5秒日記』(ホーム社)、『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』(素粒社)等。近刊は『暮らしの信じ方』(ダイヤモンド社)。
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