JR小田原駅の東口を出て、伊豆箱根鉄道の緑町駅の方へと10分ほど歩を進めると、小さなT字交差点の角に、目を留めずにはいられない建物が現れます。古い佇まいに、大きなガラスの戸が幾つも並ぶ外観。広いのか狭いのかもちょっと判別できませんが、その建物から漏れ出す不思議な魅力に誘われて、扉を開けました。
中に入ると、穏やかな笑顔で迎えてくれたのは店長の蜂谷尚由(はちやたかよし)さん。この場所の名は〈CORNER(コーナー)〉といいます。
「初めてこの物件を見たときに、『あ、俺はここでCORNERという名前のお店をやるんだな』って。それと今、暖簾に使っている図形のロゴが、同時にパッと頭に降りてきたんですよ」と笑って話す蜂谷さん。素敵な始まりですね。なんだか、この場所の自由な空気感に繋がっているような気もします。

蜂谷さんがこの場所をオープンしたのは2024年4月のこと。以前は東京の広告制作会社でプロデューサーとしてバリバリ働いていたそうです。多忙な日々の中で一度立ち止まり、人生を模索していた時期に「地方も面白そうだな」と、移住を検討し始めたと言います。
様々な場所を候補に挙げた中、譲れない条件が「音楽」だったそうです。

「東京にいた頃は、毎週のようにライブハウスへ通う生活。そのリズムを崩したくなかったんです。だから、音楽シーンがちゃんとある都市から、日帰りで帰れるようなエリアがいいなって」。

神戸に近い淡路島や、博多と行き来できる門司港も考えたそうですが、最終的に選んだのは、横浜や東京にもパッと行ける距離にありながら、独自の文化が根付く小田原でした。
そんなお話を蜂谷さんに聞きながら、ゆっくりとお茶を飲み、お菓子をいただく。その時間はなんだか不思議な安心感に包まれています。でも、お話を聞けば聞くほど、結局この場所は何なのか?という疑問が湧いてきました…。

「僕はプロの料理人でも、焙煎にこだわったバリスタでもない。でも、広告の仕事でクライアントの『こうしたい』という要望に対して、どう形にするかを考えてきた経験はある。だから、この場所が、いろんな人がそれぞれやりたいことを叶えられる場所になればいいなと思ったんです」。

ある日は蜂谷さん自身がアーティストを呼んでライブを開催し、ある日は占い師を招いてのイベントや、地元小田原のワイン屋さんの試飲会が行われる…。やはり単なる「イベントスペース」という定義には収まらない気がしますね。
蜂谷さんが嬉しそうに語ってくれたのは、近所のご友人が開いた「手作りウェディングパーティー」のエピソードです。

「家族と本当に親しい友達だけの、完全な手作りウェディングでした。二人はお酒が大好きで、よくワンちゃんを連れてうちにビールを飲みに来てくれていたんですけど、結婚式当日もやっぱりワンちゃんと一緒に現れました。お色直しも、家が近所だからって一度自宅に帰って。戻ってきたら、長かった髪をバッサリ切ってショートヘアで現れるサプライズまであって……。あれは本当に最高でしたね」
そうか、この場所の面白さは、きっとカチッとした決まりがないことなんですね。

イベントのない日は「B面営業」と称し、その日にならないと営業時間がわからないのだとか(Instagramのストーリーズで発信)。店内に置かれた本や雑貨、棚にあるグッズたちも、どこまでが売り物で、どこからが蜂谷さんの私物なのか、その境界線は曖昧です。「自分でもボーダーがわからなくなっています(笑)。僕以外に社員がいたら弊害が出るでしょうけど、僕しかいないので。効率化とかオートメーションとは真逆にある、スーパー属人的な場所。それなのにイベントをやるっていうのも、なんだか矛盾しているようなのですが(笑)」
結局、取材を終えても「この場所が何なのか」という明確な答えは出ませんでしたが、その正体のなさこそが〈CORNER〉の最大の魅力ですね。最初に入ったときに感じた「ここは何だろう?」という戸惑いは、いつの間にか居心地の良さに変わっています。なんだか蜂谷さんの人柄そのものが形になったような素敵な空間でした。またふらっと伺います!


Text & Photo:tabigatari editorial department


いつもと違う神奈川県観光には、小田原市の〈CORNER〉がおすすめ。

CORNER


所在地神奈川県小田原市栄町3-22-10(Google Map
アクセス小田原駅から徒歩約10分
伊豆箱根鉄道大雄山線 緑町駅から徒歩約2分
URLhttps://corner-odw.studio.site/
Instagram@corner_odawara
営業時間Instagramのストーリーズにてご確認ください

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