歴史ある笠寺観音商店街にできた元教師が営む書店
名古屋駅から電車で20分ほどの位置にある南区の笠寺エリアは、古くから笠寺観音(天林山笠覆寺)の門前町として栄えてきた地域だ。旧東海道の鳴海宿から宮宿(熱田宿)を結ぶ街道筋には、明治時代から徐々に形成されていった笠寺観音商店街がある。下町の雰囲気漂う笠寺観音商店街は近年新しい店舗が増え、盛り上がりが増しているスポット。今回は、2025年7月にオープンした〈ブタコヤブックス〉を訪れ、店主の船張真太郎さんにお話を伺ってみた。
「自営業で苦労した父は、息子の私には“安定した職を”という思いが強かったようです。同時に教員への憧れもあったようで、次第に私は父の思いを叶えたいと教員への夢を持ち始めました。教員生活はやりがいのある素晴らしいものでしたが、娘が『自分も学校の先生になりたい』と言い出したときには動揺しましたね。無意識に自分の言葉が娘の進路を狭めていたのではないかと思ったのです。昔から親しんでいた〈七五書店〉の閉店なども重なり、自分の人生を見つめ直してみたくなったことが、書店開業のきっかけとなりました」
店主の船張真太郎さん。〈ブタコヤブックス〉の名にちなんで、木のぬくもりを感じられる小屋のような空間を目指した。学校を想起させる什器も印象的。
同プロジェクトで「本屋になりたい」と表明したことをきっかけに、商店街の方々のサポートのもと、とんとん拍子に計画が進んでいったという。そうして、奥様の出身地でもあり、自身もなじみの深い笠寺エリアに書店開業への道が拓けた。「穏やかな日常がありつつ、笠寺観音の伝統行事の際は多くの人で賑わうなど、笠寺エリアはハレとケの境がくっきりしている街。最近は街の様子が変わってきて、より魅力ある場所へ進化しているように感じます。特に、笠寺観音商店街は少しずつ店舗が増えて、緩やかに変化しているおもしろい場所。近くには私も一箱本棚オーナーとして関わる私設図書館〈かさでら図書館〉や、複数のシェフがシェアして営業する〈かさでらのまち食堂〉のようなおもしろいスポットがあり、魅力が増してきています」
目指すはみんなが集まって自然と交流が生まれる場
船張さんにとって、書店は“困ったときに頼れる存在”。〈ブタコヤブックス〉も子育ての悩みや教員の困りごとに応えられる存在であるよう、オープンに向けて本のラインナップを考えた。しかし、実際に書店を運営していくうちに「目指す書店のイメージが少しずつ変わっていった」と船張さんは話す。
「訪れるお客さんとコミュニケーションを取りながら、少しずつ棚のバランスを見直してきました。日々の会話をヒントに本を仕入れることも。お客さんからうれしい反応が返ってくるとやりがいを感じますね。地域の方だけでなく、わざわざ遠方から足を運んでくれるお客さんが多いのは予想外でしたが、とてもありがたいことです。日々勉強しながら、お客さんに求められるお店づくりに奮闘しています」
船張さんが個人的に書き留めてきた旅ノート。〈ブタコヤブックス〉自体が旅の目的地になったと気付いたことから一旦の役目を終え、現在では開業日誌を自費出版するなど、カタチを変えて記録を続けているとのこと。
「今は、コミュニケーションのきっかけとなるようなスペースを作りたいと、一角に一箱ごとに貸し出すシェア本棚を準備中です。〈ブタコヤブックス〉の名前は、幼いころに友達と楽しく過ごした自宅の庭の小屋に由来しています。その楽しい時間を再現するべく、今後もさらに交流の場を広げていきたいですね」
Text:Ayumi Otaki
Photo:Akihiro Morita
いつもと違う愛知県観光には、名古屋市の〈ブタコヤブックス〉がおすすめ。
ブタコヤブックス
| 所在地 | 愛知県名古屋市南区笠寺町西之門33-1 |
| アクセス | 名鉄「本笠寺駅」から徒歩約2分 |
| @books_butakoya | |
| 営業時間 | Instagramよりご確認ください。 |
| 営業日 | 木曜、金曜、土曜 |
※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。