年代を超えたカルチャー誌にあふれる雑誌の図書館。


名古屋市と岐阜市のちょうど間に位置する愛知県一宮市。その中心地である本町商店街に、雑誌をメインに扱う珍しい私設図書館がある。一宮駅から約8分歩くと、〈よみかけ文庫〉の小さな看板を発見。非常扉を利用した入口がユニークで、まるで秘密基地のような雰囲気だ。
中に入ると、棚いっぱいにずらりと雑誌が並んでいて圧巻の光景。そのほとんどが店主であるワタナベさんの私物なのだとか。奥には3階にあるギャラリーへ続く螺旋階段も。店主のワタナベさんは昔からデザインやアートに興味があったそうで、オリジナルの本棚や選ばれた家具など、随所にセンスが感じられる空間になっている。
「昔から集めていた雑誌の保管場所に困ったのが私設図書館開設のきっかけでした。貸し倉庫に保管することも考えましたが、ただ閉まっておくのはもったいない気がして。そんな時に、『まちライブラリー』の取り組みを知りました」

「まちライブラリー」は、誰でも個人蔵書を活用してどこにでも私設図書館を立ち上げることができる本を通した取り組みのこと。全国的に活動が広がっており、ワタナベさんも2021年に一宮市の新木曽川近くに〈よみかけ文庫〉を開設。2025年6月には、同じ一宮市の現在の場所へ移転した。
「私はもともと岐阜市出身で、一宮市は身近な存在でした。名古屋で働くようになり、職場に近い場所へ引っ越す流れで、この地に図書館を開くことを決めました。今の場所に移転したきっかけは、遠方からの来訪者を想定して、アクセスしやすい駅近で活動してみたいと思ったからです。一宮市は、名古屋市と岐阜市の良いところを吸収するスポンジのような街という印象。過ごしやすい街だと思います」

目指すはカルチャーの交差点のような場所


〈よみかけ文庫〉は、まさにワタナベさんの趣味の空間。デザインやアート、美術、音楽、ゲーム、ファッション、サブカルチャー、ライフスタイルなど、あらゆるジャンルの雑誌が揃っている。最新の雑誌だけでなく、バックナンバーも豊富で、カルチャー好きにはたまらないラインナップの数々。雑誌の購入や持ち出しはできず、閲覧のみの利用となる。

ワタナベさんは会社員として働きながら図書館を運営しているので、不定期開館となるが、事前に予約しての利用も可能とのこと。入館料は前払いで、滞在時間はなんと無制限。思う存分、雑誌の世界に浸ることができる。
「単なる雑誌の保管場所だけでなく、人が集まる空間を目指して内装や雰囲気づくりに力を入れました。実際、交流を目的に足を運んでくださる方も多くいます。図書館を始めて予想外だったのは、地元の方がよくいらしてくださること。こうした空間や雑誌に興味をもつ方が近くにもたくさんいらっしゃるのだと新しい気付きでした」旅に出る前におすすめの本をお聞きすると、たくさんのラインナップの中からお気に入りの雑誌を選んでくれた。『モウタクサンダ・マガジン』は、フリーマガジン「TOKYO VOICE」の編集長を務め、作家・写真家としても活躍する山若マサヤ氏が手がける不定期発行の雑誌だ。
 
「“(必ずしも)旅に出ない旅行誌”をコンセプトに、何気ない日常に潜む旅の感覚を捉え、独自の視点で発信している一風変わった旅雑誌です。コンセプトのおもしろさもさることながら、デザインやレイアウトなど、“モノ”としての魅力に惹かれていますね。〈よみかけ文庫〉にもバックナンバーが揃っているので、ぜひ読みにいらしてください」
〈よみかけ文庫〉の店名は、好きなページだけ読んでも満足できる雑誌の特性を表している。「雑誌からさまざまなカルチャーを吸収し、読み手に自由に発信してもらう。そんな空間を作っていきたい」とワタナベさんは話す。

その仕掛けのひとつが、イベントやギャラリーとして使える3階のスペース「culturalspace生存」。プロジェクターや音響設備などを備え、さまざまな活動ができる空間を作り上げている。
(提供:よみかけ文庫)
(提供:よみかけ文庫)
「ギャラリー巡りや美術館が好きなので、展示やイベントができるスペースはかねてから作りたいと思ってました。今後は若手クリエイターや美大生の方たちが作品を発表する場として、無料開放していきたいと考えています。こうした取り組みから〈よみかけ文庫〉がカルチャーの交差するコミュニティーの場になっていくことを願っています」



Text:Ayumi Otaki
Photo:Yuki Arimitsu




いつもと違う愛知県観光には、一宮市の〈よみかけ文庫〉がおすすめ。

よみかけ文庫


所在地愛知県一宮市本町1丁目2-7
アクセスJR「尾張一宮駅」名古屋鉄道「名鉄一宮駅」より徒歩約8分
URLhttps://yomikake.jp/
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X(旧Twitter)@yomikakebunko
営業時間InstagramやX(旧Twitter)にてご確認ください。

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