老若男女問わず多くの人に愛される街の本屋さん
静岡県西部にある掛川市は、昭和54年に全国でいち早く生涯学習都市宣言を行い、今も生涯学習による街づくりを推進している地域だ。日本で初めて「教養」という言葉が使われたのも、ここ掛川だという。そんな掛川に、地域の文化拠点となるような独立系書店がある。
「僕が書店のない地域を訪ねると、子どもたちは買い方がわからないので本に触ることさえ躊躇するんです。『見るだけでも大丈夫だから手に取ってみて』と声をかけると、やっと本に手を伸ばします。こういった地域格差をなくしたいという思いがあり、移動本屋を始めました。今でも月に1〜2回ほどの頻度で活動を続けています」
「四半世紀以上お世話になっている本や書店に恩返ししたい」と想いを語る高木さん。さまざまなカタチで本の魅力が多くの人に届けられている。
地域住民のコミュニティの場としても機能する〈高久書店〉
秘密基地のような雰囲気の2階スペース。
約6年続けてきて、特によかったと感じたのは、うちをきっかけに本屋をやりたいという若者が現れたこと。全員で10人くらいいます。書店を立ち上げたときはこうした小さな本屋を自分であちこちに作りたいと思いながらも、コロナ禍で方向性を変えざるを得なかったのですが、結果的にその輪が広がりつつあることを大変うれしく思っています」2階のスペースは自習室(読書部屋)以外にもギャラリーとしても利用できる。地域住民の表現の場として活用されているのだとか。
地域住民の表現活動を盛り上げる取り組みはほかにもある。半年に一度発行される「文芸高久書店」という文芸誌は、掛川市民らを中心に高校生から80代の方まで幅広い方が、小説や随筆、詩、短歌などさまざまなジャンルで作品を発表している。さらに、コロナ禍に始まった俳句大賞は、今や「掛川ほんわか俳句大賞」として地域を盛り上げる一大イベントへと発展した。〈高久書店〉を中心に地域住民の表現活動の場が広がっているのだ。
最後に、高木さんが旅におすすめの本として紹介してくれたのは、『みをつくし料理帖』や『あきない世傳 金と銀』などの有名作で知られる髙田郁(たかだ・かおる)さんの『ふるさと銀河線 軌道春秋』。「時代小説作家として有名ですが、こちらは唯一の現代小説です。“人生の旅”にまつわる短編が9作品収録されています。老若男女9人の主人公がそれぞれ生きづらさや悩みを抱えながらも、幸福に向かって自分らしい生き方を模索していく物語で、読み終わったあとには暗いトンネルから抜け出したような希望が感じられる、じんわりと心が温まる本です。各編50ページ弱の物語なので読みやすく、書店員時代から幅広い方におすすめしています」
Text:Ayumi Otaki
Photo:Shinya Tsukioka
いつもと違う静岡県観光には、掛川市の〈走る本屋さん 高久書店〉がおすすめ。
走る本屋さん 高久書店
| 所在地 | 静岡県掛川市掛川642-1 |
| アクセス | JR「掛川駅」から徒歩約5分 |
| 電話番号 | 0537-29-6120 |
| @books.takaku | |
| X(旧Twitter) | @books_takaku |
| 営業時間 | 10:00〜19:00 |
| 休業日 | 日曜 |
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